中国現地法人の固定資産管理
取得から廃棄までの適正な運用と監査のポイント
固定資産管理は、企業の財務健全性と内部統制を確保する上で極めて重要な要素です。
企業は、固定資産の取得、減価償却、保管、売却、廃棄といったライフサイクル全体を適正に管理する必要があります。
不適切な管理が行われると、減損損失や資産の形骸化、不正な流出のリスクが高まり、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、中国現地法人における固定資産管理の体制強化と監査のチェックポイントについて解説します。
1.固定資産の取得と投資計画の承認体制
固定資産は高額な投資を伴うため、購入前に適切な計画と承認プロセスが必要です。
企業は「資産投資計画」を策定し、経営会議や取締役会で承認を得ることが原則です。
監査では、購入決定が文書化されているか、予算超過がないか、適正な承認フローが確立されているかを確認します。
2.減価償却の適正な適用
会計基準に基づく減価償却処理が正確に行われているかは、固定資産管理の重要な要素です。
中国の会計基準(ASBE)では、日本基準やIFRSと異なる点があるため、企業は適切な償却方法を選択し、資産台帳との整合性を確保する必要があります。
監査では、減価償却期間、残存価額、償却方法(定額法・定率法など)が規程通りかどうかをチェックします。
3.遊休資産・減損資産の認識と処理
使用されていない「遊休資産」や、市場価値が大幅に減少した「減損資産」は、適切な評価と帳簿上の処理が求められます。監査では、「固定資産減損検討シート」や減損の兆候リストを活用し、企業が定期的に資産の実態を見直しているかを確認します。長期間使用されていない設備や、老朽化した車両などが未処理のまま放置されている場合、適切な会計処理が行われるよう改善が必要です。
4.固定資産台帳の整備と実地棚卸
帳簿上の資産と実際の所在・数量・状態が一致しているかを確認するため、「固定資産台帳」の整備と定期的な「実地棚卸」が不可欠です。
監査では、台帳に記載された内容と現物の照合が行われ、資産のラベル管理や保管状態がチェックされます。
棚卸結果が記録されていない企業では、資産の紛失・盗難リスクが高まるため、適正な管理体制の構築が求められます。
5.固定資産の売却・廃棄時の適正な処理
不要となった固定資産の売却や廃棄時には、社内承認を経て適正な会計処理を行う必要があります。
特に中国では、税務当局から証憑(廃棄証明・売却証明等)の提出を求められるため、文書管理が不可欠です。
監査では、廃棄対象資産のリスト、処分方法、承認記録、仕訳内容を照合し、記録漏れや不適切な処理がないかを確認します。
6.内部統制の強化による固定資産管理の最適化
中国現地法人では、規程の形式的な整備だけでなく、実態に即した運用や職務分離、定期的な棚卸、減損評価、文書管理の強化が求められます。
企業は監査の指摘事項を活用し、継続的な改善を進めることで、固定資産管理の質を向上させることができます。
当社では、中国法人の固定資産管理に関する監査サポートを提供しております。
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